今回ご紹介するのは、スラックスの中でも縫いが一番長い、相引縫い（脇合わせ縫い)の工程です。 ここに従事されている、今村さんと小原さんは実のご姉妹で、お二人とも勤続年数４０年越えの大ベテランです。昨今は素材バリエーションも多様になり、生地特性による縫い方のアレンジも複雑になったため、２０２１年４月より工程の強化で、最強のタッグを組まれています。

縫製の難しさは、裾から膝までは迷いなく一気に縫い上げ、膝から腰にかけては１㎝から２㎝ある身頃の差異に合わせて、指の挟み具合を調整しながら、表には波うちを起こさず裏は滑らかな曲線で腰のふくらみを出す、いせ込み縫製の技術が必要になります。これは簡単には真似のできない職人技です。特に裏地付きのストレッチ素材は、伸びる表地と伸びない裏地の素材特性を理解しながら、いせ込み縫製を行う作業になり、難易度はマックスになるとの事。柄物も１コマ１コマ柄合わせといせ込みの両方に気を使いながらの、丁寧な縫製が必要になるそうです。

お二人が、毎日心がけておられる事は、後工程に不備を出さないようにすること。縫いが悪いと、後々のプレス等でおさまりが悪くなるようで、目の前の縫製を一つ一つ丁寧に向き合わないといけないとの事でした。スラックスの横顔を決める、相引縫製。見て良い、穿いて良い（穿き心地）の１本を、今日も地道に極められています。

小原さんは、創立４０周年にもらった腕時計を１５年経った今も愛用されているとの事、記念の時計と供に、これからも技術の積み上げの時を刻んで欲しいと思いました。人呼んで、相引縫製の“いせ込みシスターズ”ここにありです。